マルはすぐに息があがっていました。 ちょっと暑かったりすると、ハアハア、ガーガーと肩で息をしている状態。 逆くしゃみ発作もよく起こし、その発作も長くなると非常に辛そうでした。 最初は逆くしゃみ発作が何なのか、よくわからず、これは病気なのか?、異常なのか? 犬を飼うのが初めてだった私には、全くわかりませんでした。。。 しかし手術を受ける前になると、頻繁に逆くしゃみ発作が起こるようになり、マルも苦しそうだったので、これは呼吸困難の発作に違いないと思うようになりました。 が、現在の獣医学では病気とはされていないようです。 マルの呼吸の事も気になっていた為に、目の検査・手術が決まった時に、思い切って獣医さんに相談してみました。 そして検査の結果、鼻孔狭窄を伴う軟口蓋過長症である事が判明しました。 逆くしゃみ症候群 変なネーミングですが、これは空気の通る経路がくしゃみとは反対の為、このような名前が付けられたようです。 皆さんもご存知の通り、くしゃみは鼻腔に異物があったり、刺激があったりした場合に、それを反射的に勢いよく空気を出す事により、異物や刺激の原因になっている物を、外部へ出してしまおうとする体の防御反応です。 逆くしゃみとはその反対で、刺激物や鼻や喉の粘膜が弱い犬が気温の変化などの刺激を受けて、鼻水等が出た場合にそれらを飲み込んでしまおうとするのでは?と言われている、これも反射的に起こる反応です。 しかしまだはっきりとは解明されていませんが、現在のところ問題ないとされています。 非常に大きな呼吸音をたてますので、まず飼い主はびっくりすると思います。 やはり重篤な病気と勘違いしてしまうケースが、非常に多いようです。 逆くしゃみ発作は、突発的に起こります。 発作の時間は、数十秒〜長い時には2分程度の事もあるようです。 マルの場合ですが、呼吸音は非常に大きく、はっきした音です。 ブーブーというか、ガーガーというか、グーグーというか・・・・。 頭を前に突き出し、呼吸音に合わせて、首や顔の部分を筋立てたりします。 その状態がしばらく続き、その間マルは立ち尽くしています。 その姿は、まるで「あかべこ」の置物のようです。 非常に苦しそうなのですが、最後にごっくんとした後は何事もなかったように振舞います。 対応としては、喉をマッサージするとか、鼻に息を吹きかけるとか、胸を早く押す(あまり強く押さないで下さいね!)とか、有効とされているそうです。 しかしこのような発作でも、いつまでも発作が長く続くとか、発作中に倒れてしまうとか、今までこのような発作がなかったにも関わらず、老犬になって急に起こったとか・・・そういう場合は一度診察を受ける事をお奨めします。 個人的には、あまりにも頻繁にこの発作が起こる場合も、念のためご相談されては?と思います。 全ての症例に当てはまるとは思えませんが、裏に病気が潜んでいる事も多いような気がするのです。。。。(あくまでも個人的見解) いつ起こるか、全くわからない為に、非常に難しいと思いますが、診察の時に発作の様子を記録したものを持参した方が、より正確な診断の手助けになると思います。 私も挑戦して、もし記録できればこちらでご紹介したいと思っています。 短頭種気道閉塞症候群 パグなどの短頭種や肥満犬には大変多い疾患です。 これは頭の構造から、短頭種の宿命のようなものです。 これは空気の通り道(気道)が狭いために起こる症状を、総称して言います。 入り口の鼻から始まり、喉頭、気管までの疾患です。 短頭種気道症候群は、軟口蓋過長症・鼻孔狭窄・喉頭室外反・喉頭虚脱・気管形成不全・喉頭浮腫・喉頭ひだの重複や過形成・喉頭小嚢の反転・扁桃肥大などが挙げられます。 それらの症状は、呼吸困難・喘鳴・運動性ストレス耐性の低下(ちょっとした運動ですぐにハアハアしてしまう)・チアノーゼ・虚脱などです。 これらの症状が全て現れるのではなく、障害の種類や程度により、ケースバイケースです。 中でも軟口蓋過長症が最も多く、次に鼻孔狭窄・喉頭疾患・・・・となります。 軟口蓋(なんこうがい)というのは、鼻腔に飲食物などの異物が入らない為の蓋(ふた)です。 短頭種の場合、観察するのは難しいのですが、口を大きく開け、下顎と喉頭が真っ直ぐになるような体位にすると、見えます。 なかなかこのような体位を取るのは難しいので、鎮静が必要になります。 軟口蓋過長症というのは、この蓋が長過ぎて、何かの拍子に気管に蓋をしてしまい、息を吸おうとすると、さらに軟口蓋が気管に吸い込まれて、空気の流れを邪魔してしまい、呼吸困難になる疾患を言います。 それではなぜ軟口蓋が長くなってしまうのでしょうか? 短頭種や肥満犬は気道の入り口付近が狭くなっている場合が多いので(鼻孔狭窄など)、吸気の(息を吸い込んだ)状態では気道全体が陰圧になります。 入り口付近が狭くなっているために、空気が入りにくいので、力を入れて吸い込もうとします。 それで気道内の陰圧が、高まる訳です。 呼吸は常に行われていますので、気道内は常にこの状態にあります。 その結果、喉頭付近全体が内側に引っ張られ、反転、虚脱を起こし、気管は細いままとなり、特に成長期にこの状態にあると、正常な成長が妨げられます。 それで喉頭部にある軟口蓋も、常にのどの奥の方向へ引っ張られている状態にある為、時間とともに長くなってしまうと考えられます。 ・・・・という事は、上記のような状態が長ければ長い程、呼吸困難の状態が続けば、続く程、病状(喉頭反転・虚脱、気管形成不全など)は悪化(軟口蓋は、より長く)します。 ぐるぐると悪循環となるために、早めの治療が必要となります。 できるだけ気管が形成される成長期前の、治療が非常に大切となります。 その治療は手術になります。 長くなった軟口蓋を、その機能(異物が入らないように蓋をする)を損なわない程度に、気管を塞がない長さに切除します。 この手術の手技自体はそんなに難しいものではありませんが、どの程度切除するかが、非常に難しいと言えます。 手術をする事によって、更に気道が変化するのを抑えたり、場合によっては、完全に予防する事さえできるようです。 手術の時期は生後3,4ヶ月の仔犬でも大丈夫です。 ちなみにマルの手術を施行した病院では、生後40日が最年少です(鼻孔狭窄)。 少し前のデータ−になりますが、生後2年以内に手術をすれば91%改善、それ以上経ってしまうと68%の改善となっています。 早ければ早いほど、良いという事になります。 |
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